災害損失に関する所得税の税務の第3弾は『災害被災者に対する源泉所得税の徴収猶予・還付申請』について解説していきます。
こちらは前回、前々回の『
雑損控除』や『
災害減免法による所得税の軽減免除』と違い、源泉所得税に係わるものですので、毎月源泉所得税を支払われている方には申請してすぐに効果のある税務上の特典といえるでしょう。
〜災害被災者に対する源泉所得税の徴収猶予・還付申請〜
震災、風水害、落雷、火災のような災害により、自身(配偶者その他の親族でその年中の合計所得金額の見積額が基礎控除の額以下である者を含みます。)の住宅又は家財が
その価額の50%以上の損害を受け、かつ、被災した日において見積もったその年中の
合計所得金額が1,000万円以下の人(以下「被災給与所得者等」といいます。)が、給与等、公的年金等、報酬料金等から徴収される(又は徴収された)源泉所得税の徴収猶予や還付を受けるために行う手続です。
(災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第3条)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/saigai/8003.htm 50%以上の損害とは
住宅及び家財について生じた損害金額(保険金、損害賠償金、災害補填を目的とした災害見舞金等により補填された金額は除きます。)がその住宅及び家財の価額の2分の1以上である損害で、損害金額は各別に計算します。
徴税猶予とは
徴税猶予とは、源泉徴収を延期することではなく、徴税猶予の期間中に支払を受けるべき給与等又は報酬等に対する所得税の源泉徴収を行わないことをいいます。
※この制度の適用を受けたものは、給与所得者であっても年末調整によらず、確定申告によりその年分の所得税を精算することとされています。
徴税猶予・還付される源泉所得税額
その年分の所得金額の合計額の見積額等によって徴税猶予・還付金額が変わります。
これらの金額は給与・年金等の源泉所得税が対象となります。(( )内は今回の東北地方太平洋沖地震による場合の期間です。)
所得金額 徴税猶予される源泉所得税 還付される源泉所得税 500万円以下 災害日〜その年の12/31までの額 1/1〜災害日までに支払った額
(H23.3.11〜H23.12.31) (H23.1.1〜H23.3.11)
500万円超750万円以下 @災害日が6/30以前 災害日〜6月を経過した日の前日までの額 なし
(H23.3.11〜H23.9.10)
A災害日が7/1以後 災害日〜12/31までの額 7/1〜災害日までに支払った額
B@、Aに代えて選択 災害日〜12/31までの額の2分の1 1/1〜災害日までに支払った額の2分の1
750万円超1000万円以下 @災害日が9/30以前 災害日〜3月を経過した日の前日までの額 なし
(H23.3.11〜H23.6.10)
A災害日が10/1以後 災害日〜12/31までの額 なし
徴税猶予・還付の手続き
源泉所得税の徴収猶予・還付申請書(災免用)(給与等・公的年金等・報酬等)上記の申請書を給与・年金等の支払者を通して所轄税務署に提出します。
特に提出期限は定められていませんが、徴収猶予に関してはこの申請書を提出した後に支払を受ける給与・年金等から適用されます。
記載にあたって一番記入が難しい部分が損害金額の部分になるかと思います。
阪神淡路大震災の際には大阪国税局から簡便計算が提示されましたが、現時点(平成23年4月20日時点)ではそのような対応がされていないようです。
平成23年4月19日に今回の震災に関する税制法案が提出されたばかりですので、今後の動きに注視する必要があるでしょう。
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