2011年09月30日
平成23年度 税制改正(相続税・贈与税)について part.2
平成23年度 税制改正(相続税・贈与税)について part.1に引き続いて審議中の平成23年度相続税・贈与税の改正案について解説していきます。
今回は贈与税が中心となっております。
Fの“住宅取得等資金贈与の改正”以外は平成23年9月30日時点において未成立のものでありますのでご注意下さい。相続税計算に至る大まかな流れ(国税庁HPより)
贈与税計算に至る大まかな流れ(国税庁HPより)
〜税制改正の内容〜
D 贈与税の税率改正(
減税)
相続税の最高税率が55%に引き上げられるのに伴い、贈与税の最高税率も55%となります。
一方で、20歳以上の者が直系尊属(主に父母、祖父母、曾祖父母等)から贈与を受けた場合には、低い税率が設定されました。
それぞれの税率及び控除額は下記の通りとなっております。
税率 控除額
基礎控除後の課税金額 現行
改正案 改正案 現行
改正案 改正案 (直系尊属から) (直系尊属から)
〜200万円 10% 10% 10% 0円 0円 0円
200万円〜 300万円 15% 15% 15% 10万円 10万円 10万円
300万円〜 400万円 20%
15% 20% 25万円 10万円 25万円
400万円〜 600万円 30%
20% 30% 65万円 30万円 65万円
600万円〜1000万円 40%
30% 40% 125万円 90万円 125万円
1000万円〜1500万円 50%
40% 45% 225万円 190万円 175万円
1500万円〜3000万円 50%
45% 50% 225万円 265万円 250万円
3000万円〜4500万円 50% 50%
55% 225万円 415万円 400万円
4500万円〜 50%
55% 55% 225万円 640万円 400万円
直系尊属からの贈与については、
基礎控除後の贈与資産額が300万円〜8300万円の間においては現行制度に比べて減税されているようです。
例)父親が現金1200万円を息子に贈与した場合
基礎控除額 税率 控除額
現 行の税額:(1200万円 − 110万円) × 50% − 225万円 = 320万円
改正案の税額:(1200万円 − 110万円) × 40% − 190万円 = 246万円
現行との差額 320万円 − 246万円 = 74万円(減税額)
最も減税効果があったのは
控除後課税金額が1000万円前後で、現行より23%近く税額が安くなりますので、上記価格帯での贈与をお考えの方は改正案の可決を一つの目安にされるのが良いかと思われます。
E 相続時精算課税制度の適用拡大 相続時精算課税制度の適用対象の受贈者、及び贈与者が下記の様に改正されます。
=受贈者=
現 行:推定相続人
↓
改正案:推定相続人 + 20歳以上の孫 =贈与者=
現 行:65歳以上
↓
改正案:60歳以上 F 住宅取得等資金贈与の改正(
減税)←
こちらに関しては既に法案が成立しています。 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例(平成23年中においては限度額1000万円)は、住宅の取得が前提ですから、敷地については、「住宅の取得と共にする」土地等の取得のみが対象とされています。
改正では、下記の事項が追加となりました。
住宅の取得に先行して住宅の敷地用の土地等を取得するための土地等取得資金の贈与も非課税の対象 G 適用時期 相続税の改正:
平成23年4月1日以後の相続又は遺贈から 贈与税の改正:
平成23年1月1日以後の贈与から主だった改正内容については以上となっております。
Fの“住宅取得等資金贈与の改正”以外は平成23年9月30日時点において未成立のものでありますのでご注意下さい。 〜改正内容について〜
相続税に関してはおおむね増税で、
贈与税は減税傾向にあることがわかります。
資産保有額の多い親から子・孫への財産承継を促し、消費を促進させようとする景気対策の一環と思われます。
今回の税制改正で最もインパクトの強いものが相続税の基礎控除の引き下げではないでしょうか
現在、財務省のサイトで公開されているデータを見ますと、亡くなられた方の内、相続税の課税があった件数がおおむね4〜5%で推移しています。
今回の改正によって、相続税の納税が一部の資産家にとどまっていたのが、一般の中流家庭にまで及ぶようになってしまい、上記の課税件数が一気に跳ね上がる可能性があります。
もし、課税対象になりそうなご家庭は今回減税傾向にある贈与を含め、早めの財産承継対策をご検討されることをお勧めいたします。ご相談に関しては当事務所でも無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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